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123 見られていないはず

Author: 栗栖蛍
last update Huling Na-update: 2025-09-16 08:40:05

「なぁ芙美、覚えてる?」

 湊が床の布団に入ったまま話を始める。

 芙美はベッドに仰向けに寝転んで、白くぼんやりと光る蛍光灯を眺めながら彼の話に耳を傾けた。

「リーナはさ、ラルのこと笑わせようとしてたよね」

「まだ会ったばかりの頃だね」

 突然彼が切り出したのは、ターメイヤ時代の話だ。

「そう。前から話そうと思ってたんだけど、なかなかタイミングがなかったから」

「気付いてたんだね」

「そりゃ、あれだけあからさまにされたら分かるよ」

「そんなに?」

「だから余計にリーナやアッシュが煩わしいって思ってた」

「あぁ……そうだよね」

 何となくラルに避けられているのは分かっていた。彼は仏頂面であまり話さず、仕事以外ではいつも一人で居る事が多い。だから最初はリーナもラルを怖いと思っていた。

 本人の口から「煩わしい」とハッキリ言われてショックだったが、湊は「昔の事だよ」と加える。

 今思うと智が転校して来るまでの湊も、あの頃のラルと同じだった気がした。電車で窓の外ばかり見ていた彼は、いつも側に居た芙美をどう思っていたのだろうか。

「ラルは初めて会った時からずっと怒ってるみたいだったから、リーナは笑顔が見たかったんだよ」

「ごめん。ラルは戦場での実戦経験があることを誇りに思ってた。全部父親がいたからできた事なのに、自惚れてたんだ」

 懐かしむように、少し寂しそうに湊はその話をする。

「父親が死んだ頃から世界の情勢は徐々に落ち着いて、暇になった俺に父親の知り合いが勧めてくれたのがリーナの側近だ。ウィザードの片腕になれるっていうから張り切って試験を受けたのに、実際受かってみたら自分の仕えるウィザードは弱そうな女の子だった。もう一人選ばれた奴はお気楽な奴で、正直ガッカリしてたんだ」

「ご、ごめんなさい」

「いや、そうじゃなよ。俺の自惚れだっていっただろ?」

「うん……」

 どうやらラルは傭兵時代を重ねて『ウィザードの側近』という任務に殺伐とした環境を求めていたらしい。確かにあの頃は平和だった。訓練はしていたけれど、楽しかった記憶の方が多い。

「ハロンが来るまで実戦なんて殆どなかったもんね」

 そんな思い出話が続いているが、芙美は今何故こんな話をしているんだろうという気持ちだった。彼にとっては共有したい過去なのかもしれないけれど、もっとこう楽しい話をしたいと思ってしまう。

 芙美はベ
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